IndexKyofu ContentsGekisuke!SaleLinkMail



________________________________________ Back Number _______________________________________



Back Number 『スパイキッズ3-D ゲームオーバー』

ハリウッド新作情報『スパイキッズ3-D ゲームオーバー』 ※ネタばれあります 2003/8/26
「スパイキッズ」シリーズの第3作目である「SPY KIDS 3-D: GAME OVER」が全米で公開と
なり、20日足らずで$97million(約114億円)を稼ぎ出す、文句ナシの大ヒットとなった。
この作品はハリウッドの映像関係者、特にフィルムI/Oや上映システムの技術者達が注目する
作品となり、その為のテクニカル・セッション&試写会が行われる等、話題を呼んでいる。
なぜこの「子供向けの作品」が注目を浴びているのだろうか? その秘密をこっそりご紹介す
る事にしよう。

○ストーリーは、テーマパークのライド映像のようなノリ
表向きはゲーム会社のボス、しかし実際はビデオ・ゲームを利用して子供達を操る"トイ・メ
ーカー"(なんとシルベスター・スタローンが演じている)によって、ゲーム内のバーチャル
空間に閉じ込められたカルメン(アレク・ヴェガ)。姉が行方不明の報を受けたジュニ(ダリ
ル・サバラ)は、スパイのおじいちゃん(リカルド・モンタルバン,「スターとレック/カーン
の逆襲」のカーン役でSFファンにはお馴染み)とゲームの中のバーチャル空間に侵入し、ゲー
ムを勝ち進みながらカルメンを探しに行くというストーリーである。

このように、ストーリーは単純でわかりやすい、あくまでも子供向けの内容だ。その意味では、
テーマパークのライド映像を観ているノリに限りなく近い作品である。シリーズでおなじみ、
スパイの両親の出番は極端に少なく、主役はジュニとカルメンとおじいちゃん、後はゲームの
中に登場する子供達だけに的を絞った配役となっているが、何故かそれがかえってゲーム的な
ストーリーをスッキリとさせて、スピード感を加速させている。

無駄を排した脚本が、不思議と効を奏している例かもしれない。もともと、人間ドラマを期待
するような作品でもないだろうし(笑)。しかし、ファミリー映画という事もあり、祖父母へ
のいたわりの気持ちや、家族の絆等がストーリーにきちんと盛り込まれている。大人向けのジ
ョークも仕込まれていて、子供に連れてこられた大人が鑑賞しても、楽しめるような配慮もき
ちんとなされている。

また、意表をついたスタローンの登場もそうだが、大統領がジョージ・クルーニーだったり、
ヘンな所に大物スターが登場しているのも、この作品の隠れた面白さと言えるだろう。

○最近では珍しい、立体映画での全米配給
まず、大ヒットの理由の1つとなったのは、この作品が「立体映画」であるという事だ。
60年代に流行した、赤と青のメガネを掛けて鑑賞するアナグリフ方式の立体映画と同じ
フォーマットを採用している。しかし、完全なモノクロではなく、右目が普通のカラー、左目
に赤のフィルターが掛けてあり、赤青メガネによって左右が脳で分離されるようになっている。

画面から物がバンバン飛び出してくる演出に子供達は大喜びだった。特に、ゲーム中のバーチ
ャル空間が立体映像で楽しめるのは斬新な演出に感じた。心なしか「トロン」や「スターウォ
ーズ」等へのオマージュも感じられた。しかし、このアナグリフ方式は、目が疲れるのが欠点
である。長編映画を最初から最後まで赤青メガネで観ると、気分が悪くなる観客も出かねない。
そこで、この作品にはそれを配慮した演出が行われている。

まず映画が始まると、シリーズに共通して登場しているFegan Floop(俳優のAlanCumming)が
登場、「まだメガネは掛けないでね!あとでサインが出てくるから、そうしたらメガネを掛け
てね!」と観客に呼びかける。ある程度映画が進行したところで、サインが出て立体映像とな
るのである。

中盤に「メガネをはずせ!」というサインが登場し、しばらく非立体のシーンが続いて観客の
目を休ませた上で、またしばらくすると、また「メガネをかけろ!」というサインと共に立体
映像に戻るという演出が盛り込まれていた。これらのサインのフォントはゲーム調で、ほとん
どゲームをしているような感覚で映画を観ている、そんな感じであった。
映画の全編85分のうち、ほぼ半分近くが立体のシーンだったように思う。

○全編HD撮影とキャメロン監督とのコラボレーション
この作品は、「スターウォーズ エピソード2」と同じく、全編がソニーのデジタル・ハイビ
ジョンカメラで撮影されている。このカメラによる立体映像作品としては、ジェームズ・キャ
メロン監督の「Ghosts of the Abyss」があるが、この「スパイキッズ3D」ではキャメロン監
督の協力によって、立体撮影が実現したのだという。

映画の最後のスタッフロールにも、「協力」の欄にキャメロン監督の名前がクレジットされて
いた。

○膨大な数のVFXショットと、見応えのあるCG
この作品でのVFXショットは850ショットに及んだという。その殆どがグリーン・スクリーンに
よる撮影で、サンアントニオ近くのスタジオにおいて数ヶ月に渡り行われた。しかし、それで
も普通の映画作品よりは撮影期間もポスプロ期間も短く、苦労したとの事。2台のHDカメラで
撮影された膨大な素材は、Hybride Technologies、 ComputerCafe 、CIS Hollywood等の各CG
ベンダーに送られ、ポスト・プロダクションが行われた。

ゲーム内のシーンでは、驚異的な量のCGが登場する。立体映画だから、右目&左目の両方の
素材をレンダリングしなければならず、しかも3次元的に正しくオブジェクトが配置されてい
ないと立体視をした時に嘘がバレてしまう。合成による「逃げ」が使えない分、各CGベンタ
ーの苦労は並大抵ではなかっただろう。(つづく)
(なべじゅん@ロサンゼルス)


『スパイキッズ3』スペシャルレポート第二弾 2003/8/28
○ハリウッドで開催されたテクニカル・セッション
HD撮影による劇場用立体映画としては世界で最初の試みであるこの作品は、業界関係者が注目
するところとなり、映画関係者を数多く輩出してきた南カリフォルニア大学(USC)のエンター
テインメント・テクノロジー・センター主催のテクニカル・セッションが、8月18日夜にハリ
ウッドで開催された。その内容もさっくりとご紹介しておこう。

The Entertainment Technology Center at USC
DIGITAL SCREENING SERIES Presents

Dimension Films / SKY KIDS 3-D : GAME OVER

権威ある名門大学が「スパイキッズ3D」を真面目に取り上げるところに、ハリウッドのふと
ころの深さと、テクノロジーの進歩をエンタテインメントに応用しようとする真摯な姿勢が見
て取れる。

この日は、まずDLPによるデジタル・プロジェクションによる「スパイキッズ3D」の試写会
が行われた。上映設備のスペックは次のとおり。

プロジェクター:Christie m15 と Texas Instruments DLP Cinema(TM)の組み合わせ
再生システム :Panasonic 3700 HD D-5 High Definition Tape Deck
音響システム :Dolby CP650, THX 1138 Crossover, Crown Amps, JBL Speakers

この試写会には、ハリウッドの映像関係者が数多く訪れ盛況だった。また、子供を連れてきて
いる人も多く、子供達の歓声が場内に響きわたっていた(笑)。試写の後は、VFXスーパーバ
イザーのBrian McNulty氏が質疑応答に立ち、観客の質問に答えた。
その一例をご紹介しよう。

参加者A「撮影とポスプロの流れについて聞かせてください」
McNulty氏「 撮影はすべてソニーのHDデジタルカメラです。このHDカメラでの立体視の撮影は、
 キャメロン監督が「Ghosts of the Abyss」で確立したノウハウを、キャメロン監督とのコ
 ラボレーションにより取り入れました。撮影はスタジオではD-5のHDビデオテープに記録さ
 れ、我々はHDモニターで確認しながらの撮影でした。D-5のHDテープはポスプロに送られ、
 デジタル・ベータに変換されました。これは編集用のアビッドに落とす為のものです。プロ
 セス的には、テレビ番組の製作に限りなく近かったと思います。アビッドでの仮編集の後、
 最終編集とカラーコレクション、合成はインフェルノ上で行いました。完成したデジタル・
 マスターは、1コマずつフィルム・レコーディングされ、ここから配給用の上映プリントを
 起しました」

参加者B「なぜ、ポラロイド方式の上映にしなかったのですか?」
McNulty氏「アナグリフ方式だと、特別な上映システムが不要だからです。左目の画像に赤の
 フィルターをかけて、右目の画像に合成して1本のフィルムに焼けば、普通の映画館で上映
 するだけで済みます。ポラロイド方式だと、右目用&左目用の映写機が2台必要になります
 から、限られた映画館でしか公開出来ません。配給の問題から、アナグリフになりました。
 大スクリーンでの上映テストも成功し、視覚上も問題がないと判断されました。でも、今回
 配給会社が苦労したのは、「スパイキッズ」のロゴが入った特製の赤青メガネを3000万個も
 用意しなければならなかった事だと思いますよ」

参加者C「ポラロイド方式での公開の予定は?」
McNulty氏「今のところ未定ですが、素材はあるのでリマスタリングさえすれば技術的には可
 能です。何か機会があれば、ぜひともポラロイド方式での上映もやってみたいとは思ってい
 ます」

参加者D「今日の上映システムはHDのデジタル・ビデオによる再生ですが、音響は映画館と同
 じですか?それともトラック・ダウンしているのですか?」
McNulty氏「同じです。6チャンネルのドルビー&THXです」

参加者E「2つ質問です。何箇所か、立体視がやや不自然なショットがありました。また、赤
 青メガネを使用する事によって、カラーコレクションで苦労した点は?」
McNulty氏「お気づきのとおりです。合成時に、演出サイドの要求に応える為に、2次元的に
 素材をずらして視差を調整したシーンがあります。こうすると、なんとなく立体には見えて
 も不自然な印象になってしまいます。これらは、もっと納期が長ければ、完璧に調整出来た
 と思います。今回は、ポスプロの期間が数ヶ月と短かったですから。カラーコレクションで
 すが、赤青メガネの特性に合わせた調整が必要でした。例えばゲームの中で子役が投げる 
 「ボーナス点」のタブレットは赤ですが、これはテスト試写の結果、赤青メガネで観ると立
 体視に問題が生じたので、タブレットを少し紫にする事によって回避したりもしました。

○子供達からの質問

坊やA「あの〜、4作目はあるの?」
McNulty氏「ど〜かな〜(笑)子役達はみんな学校に戻ったしね〜。監督さんもしばらくは他
 のお仕事で忙しいし。でも、監督さんは何らかの形で、また作りたいな、とは言ってました
 よ」

坊やB「さつえいには、なんにちかかりましたか?」
McNulty氏「数ヶ月かかったけど、スケジュール上で一番大変だったのは、子供達(子役)が
 学校に通わなきゃならないんで、その為に何度か撮影が中断した事かな。1週間撮って、し
 ばらく空いて、また1週間、そんな感じだった。シルベスター・スタローンのスケジュール
 調整よりも、子供達のスケジュール調整の方が大変だったかもしれないね(笑)」

※子供達の質問にもきちんに答えてくれる、こんな環境がうらやましく思えた。こうゆう子供
達が大きくなったら、きっと素晴らしい映画を作るようになるのだろう。


○おわりに

 HD撮影による映画製作については、ハリウッドの撮影監督の間では未だ賛否両論が飛び交っ
ているが、新しいメディアには試行錯誤と時間とアイデアが必要だ。こうした中で、この「ス
パイキッズ3」は新しい流れの中で、なかなか上手い使い方をしているように筆者は感じた。

 たしかにストーリーは子供向けではあるが、後半のゲーム内でのCGバトルは、しっかり作
りこんである為、立体映像で観るとかなり見応えがあり、これだけでも一見の価値はある。 
前述のように、この作品は「映画作品」として捕らえるのではなく「長編ライド映像を映画館
に観に行く」感覚で楽しんだ方が良いだろう。

 蛇足であるが、筆者が一番興味深かったのは「立体で観るシルベスター・スタローン」(笑)。
普段、映画で観るスタローンは平面だが、この作品は立体映像なので、奥行き感がある分、顔
の造りが良く分る。顔の彫りの深さとか、スタローンはアゴの形がこうなってたのか!、等と
普通の映画ではわからない部分が体感出来て面白かった。

 でも、どうせ立体で観るなら、是非今度はブリトニー・スピアーズがいいな…。
(なべじゅん@ロサンゼルス)



<<< 戻る >>>


IndexKyofu ContentsGekisuke!SaleLinkMail