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※愛。涙。珠玉。観る者を感動の渦に巻き込むことを目的として作られながら、道徳や良識、
規範や倫理などの点からみて、どう考えても筋違いだろって映画がこの世には存在します。そ
のテの映画に限って自身の偽善や欺瞞や悪徳に無自覚であり、その分余計にタチが悪いと言え
るでしょう。これは、そんなドグサレ映画をぶっ殺すコーナーです。泣いたアンタも同罪や。
Vol.14 『白い船』
●島根県の漁村に住む子供たちと旅客船の交流を描いて、小さなブームになった映画です。人
は少なからず感銘したようですが、私には理解出来ません。船をもっと近くで見たいと思った
子供たちが、漁船を失敬して沖に出たまま遭難するという事件が起こります。無事救出には成
功したのですが、何故なんでしょうか、誰一人として叱り飛ばす大人が現われません。生存を
確認すると同時に「ようし、良く頑張った」と声をかけるのはまあ良しとしてもだ、危うく死
にかけた浅知恵を反省させる意味でも、一発張り倒さなアカンでしょうが。なあにをニコニコ
しとるんだ、親も教師も。まあ校長自ら、子供たちがよく見えるように、もっと浜の近くを航
行してくれと船長に談判するような抜け作(航路の設定を何と心得ているのか)じゃあ、仕方
ないか。教育と躾けの現場における、意志の尊重と無責任な迎合との恣意的な境界線について
考えさせられる内容でした。あ、大滝秀治さんは笑ってていいんですよ。
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Vol.13 『天使のくれた時間』
●利潤のみを追求する企業人が、貧者との交流をきっかけに自由精神と人間愛に目覚めるとい
う物語の典型があります。貧しい者ほど心が豊かであるという幻想です。この世には貧しい者
の方が多いから、べんちゃら言わねば商売にならないということです。このパターン、現在で
は、独身の仕事人間に家庭の有難みを諭すという形で受け継がれています。さて主人公のニコ
ラス・ケイジは、ヤンエグの独身。住まいはマンハッタンの高級マンション。車はフェラーリ。
趣味はオペラ。セックスに不足はなし。なのに天使の差し金で、もし学生時代の恋人と結婚し
ていたら、の世界に放り込まれます。そこはニュージャージーの一軒家に二人の子持ちでスー
パーのブランド品を着て義父のタイヤショップに勤めてボウリングで憂さ晴らしという世界で
した。あのなあ、これ誰が見たって、前の暮しの方が良いと思うぞ。それが証拠に、人が変わ
ったようだと夫を批判していた女房も、ケイジが高級レストランで慣れた様子でエスコートし
たらウットリしてたじゃねえか。ラストでは元の世界に戻って、同じく独身だった彼女と再会
して、愛をもう一度育もうというところで終わります。つまり、金があって愛する家族と暮ら
すのが人生一番ということなのです。そんなもん、言われんでも、出来ればやっとるわ!
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Vol.12 『真夜中のカーボーイ』
●やあ。都会で頑張ってるみんな、調子はどうよ。友達や恋人は、え、出来た? ……。お前
もう読まなくていいよ、帰れよ。残った俺らで、体育館座りでこの映画観っからよ。すげえよ、
これ。ジゴロで成功するって大志を抱いてNYに出てきた田舎モンが、待ったなしの現実勝負
に負ける物語だよ。人は職と家を持たないと、「人間」であっても「人」ではなくなるって話
よ。十代のうちに一度は観といた方がいいな。俺は初めて東京に出てゼミの夏季講習受けてた
17の夏の日曜日に観て、それ以来うなされてるよ。今は何とか家も仕事もあるけどいつまで続
くか判ったもんじゃないんだよ。んなもの、明日にも消える運命なんだよ。消えたらどうだっ
てんだよ。どうせ40年も生きてきてなんにも手に入らなかったじゃねえかよ。この先40年なん
も手に入りゃしねえよ気の迷いだまぼろしだよ何が東京砂漠だ大都会の孤独だ馬鹿野郎だから
どうしたってんだ出来もしない夢抱えちゃいけえねえのかお前そんなに偉いのかお前そんなに
偉いのかよわあ誰だ誰だドアを叩いて大家さんこんな夜中にまたやってます早く痛い痛い白衣
の人が俺の腕に注射。
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Vol.11 『キャスト・アウェイ』
●コンビニのレジ以外、誰にも話かけて貰えない人にとっての、まるで肝試しのような映画で
す。真面目な仕事人のトム・ハンクスが無人島に流され人生も全て流されるという、何か深い
教訓があるようで今一つ神の意志の不明瞭な、心底不気味なお話です。ヒトが如何に道具を発
明し火を征服し芸術を創造したかを再現する、文化人類学的側面もあります。しかしこの映画
が素晴らしいのは、過去の無人島映画ではヤシの小屋とかで文化的な暮しを実現していたのに
対し、島の様相が完全に荒廃して資源は消費し尽くされ、生きる情熱の消えかけたハンクスは
バレーボール相手に独り言を繰り返すほどに人格が歪んでしまっている点にあります。何たる
恐怖! 皆さん、人は、言葉や愛情を掛け合う他人が身近にいないと、狂ってしまうんですよ。
狂うんです。頭狂うんです。狂うんだよ。狂って当然じゃお前らに何が判るかどあほ毎日毎日
暗い部屋で鏡に向って喋りやがって夢も希望もあるか未来はのっぺらぼうじゃ大変だ大変だの
っぺらぼうだ俺はのっぺらぼうだ俺はのっぺらぼうだあわあ誰だ誰だドアを叩いて大家さんこ
んな夜中に一体おまわりさんまで何だ何だ土足のままちくしょう痛い痛い放せ放。
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Vol.10 『プリティ・ウーマン』
●以前ちょっとした集まりで、この映画は悪か否か、が話題になったことがありました。極悪、
という観点ではないのですが、私の考えを記しておきましょう。名うての企業買収家が、街娼
と接するうちに人間性を持ち始めるストーリーです。真のイノセンスは純潔から遠く離れた貧
乏娼婦の心の中にこそ宿っていたという、現実にはそんなことあり得ないと認識しているから
こそ書けるファンタジーです。シンデレラ・ストーリーなんでしょうが、これねえ、ニューヨ
ーク本社の社員にしてみれば、社長がどこぞの売春婦にタマ握られたとしか見えませんぜ。恐
らく、今度はこの会社が別の乗っ取り屋の餌食になることでしょう。社員全員その家族も含め
て路頭に迷いかねないわけです。荒れるだろうなあ、株主総会。マスコミのいいネタです。パ
ラシュートをつけずにダイビングしていることに気付かない、浮かれ男の鼻の下をよっく見て
おくことにしましょう。
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Vol.9 『トゥルーマン・ショー』
●郊外で平和に暮らすトゥルーマンは、街の正体が巨大なオープンセットであり、自分の人生
は誕生以前から全世界に生中継されていたことを知り愕然とします。彼は幼少時から番組プロ
デューサーの手で条件づけられ、外の世界に注意を払わないように調教されていました。その
代わりに、彼の住む社会はホームレスも悪人も売春婦もいない、完璧に清潔な領域です。プロ
デューサーは宣告します。「これはお前の現実だ。何も考えるな。代償に私が完全な平和を与
えてやる」。この映画で糾弾されているのは、自由と平等を標榜しながら、その実、市民を飼
い馴らそうとする、左翼リベラルの大いなる偽善についてであります。民主党支持が主流のハ
リウッドのリングで、真の保守派が放った右フックといったところでしょうか。主役を張るの
が共和党派イーストウッドの子分ジム・キャリーであり、その彼がアカデミー協会から全く無
視された事実は、何か関係あり? と私は考えてしまうのです。ちなみに監督はオーストラリ
ア人です。
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Vol.8 『ホーム・アローン1&2』
●映画史に残る大失敗男マコーレー・カルキンの、言わずと知れたヒット作です。家族旅行か
ら置いてきぼりを食った男の子が、泥棒二人組を懲らしめるコメディ映画なんですが、これが
目も覆うバイオレンスの連続で、何故ほかの客はあんな呑気に観ていられるのか私には不思議
でなりませんでした。カルキンが泥棒相手に下した鉄槌の数々を少し列挙すると……空気銃で
股間直撃。アイロンで顔面殴打。電熱器で火傷。釘を足に貫通。バーナーで頭部に放火。ガラ
ス片で足に殺傷。毒グモ。車の屋根に落下させレンガを投擲。顔面に釘打ち。感電。鉄管直撃。
とにかく硬くて大きくて重いものが次々と頭上に落下する……悪者をとっちめるというレベル
をとうに超えています。悪魔の仕業か。コメディ処理されていれば、こんな暴力行為を延々と
子供に見せつけても構わないというのでしょうか。キッズ映画つっても、作ってるのは大人だ
からねえ。人をボッコボコにするのが面白いと、ニヤニヤしながら撮影しているわけだしなあ。
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Vol.7 『グッドナイト・ムーン』
●ほぁたあ!(鈍い音)……すみません。どうしても我慢できなくて、先に一発、ヌンチャク
でブチのめしちゃいました。女同士の友情? 親子愛? 感動? ナメとんのかコラ。弁護士
のエド・ハリスは古女房を棄てて、若い女性カメラマンと恋愛中で、説明するのもウンザリな
ので結果だけ述べますと、元妻と愛人は信頼の絆、父と暮らす子供二人と愛人とは友情、夫と
元妻が和解、元妻は癌で死亡確定、となります。何とステキな結末でしょう。誰にとって?
エド・ハリスにとって。全てのトラブルが丸く収まる、夢のような筋書きです。大体、仕事で
長期間家を空けることが多い上に、再婚するでもない愛人と同棲中の父親が、どうして子供の
共同親権を勝ち取ることが出来たのか。女房側の弁護士相手に離婚調停で裏工作したな、お前。
ふう、金と権力かあ。つまりこの映画は、妻子がいながらオネエチャンと不倫中の、或いは不
倫を夢見る中年男性に捧げられた究極のファンタジーなのです。
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Vol.6 『かあちゃん』
●5人の子供を束ねて奮闘する母親の人情話です。この人がまあ、度外れた善意の塊でして。
服役中の知人のために、自分たちの食いぶちを削ってまでして金を貯めてやったり、盗みに入
った食い詰め者の青年を家族の一員として面倒見てやったりするわけです。いい話なんですが、
観ているうちに、何故この人はこんなに他人に親切なんだろう、という疑問が湧いてきます。
その答えはちゃんと用意されていました。彼女が親切にする人には共通点があったのです。そ
れは耳にホクロがあるということ。なんでも先立たれた最愛の夫が、やはり耳にホクロのある
男だったため、そういう人が困っているのを見ると助けずにはいられないんですよ。あれだけ
桁外れの博愛心を持った人ですら、その裏には何がしかの理由がある。善意というのは、結局
のところ、まったく個人の気まぐれから発生しているようなものであると。理由もなしに人が
人に優しくするハズがあるものか。全ての厚意には必ず裏があるのだということなんですね。
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Vol.5 『ノートルダムの鐘』
●ようもまあ、アニメなんかにする気になったもんです。だって主人公は、あれですよ。えー
と、わかるでしょ。でも出来上がった作品を見ていると、上手いこと絵にしていました。感心
しますね。ところが、椅子からずり落ちそうになったのが、敵役であるフロロー判事のキャラ
です。パリを牛耳り、ロマを弾圧する分離主義者なんですが、その理由というのがテメエの性
欲に対する粛正ってんですから、頭イカレてます。エスメラルダの黒髪(ぶ厚い黒髪は性の象
徴)が鼻先に触れた瞬間の、物凄い恍惚の表情を見よ! 肉欲に捕らわれた我が身を恥じて神
に懺悔するレビュー場面の、ドン・ジョバンニばりの凄まじい暗黒演出はいかなることぞ!
こんなモノを子供に見せていいのか、つうか、子供にわかるのか! と思って、幼稚園に通う
双子の姪と3 人でビデオを見たんですが、子供の心には、単にそういう場面としか映らなかっ
たみたいでした。作り手が汚れているのか、私が汚れているのか……。蛇の道は蛇ってことで
すかね。
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Vol.4 『ライオン・キング』
●この映画が隠し持っている悪意を、なぜ誰も糾弾しないのかが、私には不思議でなりません。
物語は動物王国の王様ライオンに息子が生まれ、それを祝うために動物達が集まる場面から始
まります。何故祝う? 喰われるのに。王が息子に「お前もいずれは国を継いで国民を守るの
だ」と諭すと、息子は問い返します「守るべき相手を食べるの?」。王の答えは「サークル・
オブ・ライフ」。もっともらしいコト言ってますが、それだとライオンを頂点とした王国内ヒ
エラルキーに矛盾しますし、そもそも回答になっていません。実際に子供に質問されたら、あ
なたならどう答えます? 結局この王国では、取りあえず日常の平和はライオンが守ってやる
から、喰われる瞬間までお前らは何も考えずに黙って従っとけ、という不文律が罷り通ってい
るわけです。一見リベラルを装っていますが、つまるところは自分らに都合のいいスタンダー
ドの押し付けなんですね。もちろんこのライオンとは、アメリカのグローバリズムを意味して
いるんですが。ま、言いなりになってる方がラクっちゃラクか。
Vol.3 『トイ・ストーリー』
●子供の頃、夜寝ていると、部屋の中に幽霊がいるような気がしては布団に潜り込んだ経験が
あります。必死の思いで、早く朝になりますようにと、願ったもんでした。では、昼間に幽霊
が現れたら、何を願えばいいのか。その命題に突き当たったとき、私は深い絶望感に捕らわれ
たのです。深夜のキャンプ場より、炎天下のディズニーランドで客を皆殺しにするジェイソン
の方が絶望的に逃げ道なし、ってことです。その恐怖を思い出させてくれたのが、この映画で
した。オモチャを大切にしない悪ガキという設定でGOTH少年が登場するのですが、この演出が
度を越してまして。学校へも行かず暗く閉め切った部屋でメタルに囲まれながら、人形をバラ
バラにしては、ゲルショッカーもビックリの改造人形をひたすら作って爆破しているんですね。
明らかに精神のどこかに傷を負っている様子。で、その恐怖畸形人形たちが、捕虜になったウ
ッディとバズを助けて庭に突撃する場面が、もう、ボッシュの描くアルマゲドンかと思わせる
異様な光景で、こんなモノ、子供に見せていいのか! ほかにも、悲惨な運命が待っていると
も知らずに、クレーンに掴み取られることを神の降臨だと信じて疑わない宇宙人の群れっての
が、結構なイヤミだったり。一皮めくると黒蛆がわいているのを感じます。でも、そういう要
素が希薄になった2作目が、ちょっと物足りなかったってのもまた事実なんですが。
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Vol.2 『マイ・フレンド・フォーエバー』
●小さな作品なので観た人は少ないと思いますが、タチの悪い感動作であることには違いない
ので、迷わず磔にしますね。ダメ母との母子家庭でグレたB・レンフロの隣りに、HIVキャ
リアのJ・マゼロ(ジョスメントのパチモンみたいな子役。こっちのほうが先輩ですが)が越
してきました。レンフロは「エイズに効く薬草だ」と裏山の葉っぱを煎じてマゼロに飲ませま
す。マゼロ発熱。「ルイジアナで特効薬が発見された」とガセネタを信じてマゼロを冒険に連
れて行きます。マゼロ入院。入院中も病室に入り浸り、看護婦を脅かしてハシャぐレンフロ。
遂にマゼロ死亡。そして葬儀の日、マゼロの母親は「息子に思い出をありがとう」とレンフロ
に感謝の言葉を。あのなあオカン。どう考えてもアンタの息子は、こいつのせいで早死にして
るぞ。告訴しろよ、告訴。テメエの馬鹿で人を殺しときながら、その事実に気づかないクソガ
キの話です。泣いてる場合じゃないと思うがなあ。
Vol.1 『旅情』
●中年の独身女性が、休暇を取ってベニスを訪れます。そこで独り身の悲哀をたっぷりと味わ
ったところで、土産物屋の主人が登場。なかなかイイ男で、ベネチアのデートを楽しませてく
れます。ところが、すっかり舞い上がったところで、男が実は妻子持ちだということを女は知
ってしまい、彼に怒りをぶつけます。すると、真実を告げると去って行くから、と男は開き直
り。アンタだって旅先での素敵な出会いを夢見ていなかったとは言わせないぞ、と逆ギレ。つ
いには名セリフ「私は確かにさえない土産物屋の店主だ。だが飢えている時に、目の前にラビ
オリがあるのなら、ステーキが食べたくてもラビオリを食べなさい」と。おーい、調子こいて
んじゃねえぞ、オヤジ。てめ、何を口走っとるか判ってんのか。「おまえ程度のいき遅れ女は、
四の五の贅沢言っとらんと、わしにヤラレときゃええんじゃ」って意味だぞ、それ。女も、ポ
ーっとなってヤラレてんじゃないよ。列車から手を振って別れるラストは名場面の一つになっ
てるが、単なる「食い逃げ大成功」って話だろうが。まさにイタリアンオヤジのナンパテク炸
裂。感動してる場合じゃないよ、ホント。
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