映画がそんなにエライのか

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Vol.1 〜 Vol.10

Vol.1 『ユリョン』
 韓国原潜内でクーデター勃発。日本国に核ミサイルをブチ込もうとする反乱分子と、それを
阻止せんと単身戦うミサイル管制官! と聞いて、『レッド・オクトーバーを追え』+『ダ
イ・ハード』のような、スカッとしたアクションものを想像したあなたは大失敗。実際には蛭
子能収の漫画みたいに、脂汗流した男どもがにらみ合うだけの陰気な内容です。海自の潜水艦
を海底深く沈めながら、敵(つまり日本人ね)の断末魔の悲鳴をソナーで拾って艦内に放送し
たりとやりたい放題。ある意味、『プライベート・ライアン』観せられたドイツ人の気持ちが
判るような。ラストも爽快感ゼロ。苦い映画が嫌いな人は避けた方が身のためでしょう。
 (上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.2 『ザ・ウォッチャー』
キアヌ・リーブスが「最も美しい殺人鬼」というふれこみで演じるデビッドは、孤独な女たち
を次々と殺していくのだが、その方法が快楽的、残忍そのもの。まったく同情の余地なし、な
のである。せっかくキアヌが出演したのだから、もう少し殺人鬼の心理にまで踏み込んでほし
かったのに……。そのあたり、彼も不満だったのか、どうも演技に精彩がない。表情はほとん
ど仏頂面。目が死んでる。それがかえって“クール”と言えばそれまでだけど。さらに悲しい
のは、この殺人鬼の目的が、ジェームズ・スペイダー扮する刑事(一応、こっちが主役)を精
神的に追いつめるためだけということ。女たちは、ただただ欲望のままに殺され続けるのだ。
でも、無表情でもキアヌは、やっぱり美しい、か。ファンにとっては表情に乏しい分、じっく
りとお顔を拝める、というメリットがあるかも。
(斉藤博昭 ライター/30代/男性)
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Vol.3 『ビジターQ』
 長女は援交、長男は家庭内暴力、母がシャブ中で父が窓際族。家族崩壊のバリューセットみ
たいな一家に突如乱入したトリックスターが、一家を解体したのちに再生するという、まさに
“家族ゲーム・ミレニアム版”。てな感じに話は進展するんですが、中盤、ビジターQこと鈴
木一真が内田春菊の母乳を搾りまくる場面から物語のトーンが一転。強姦、屍姦、脱糞、膣口
収縮、中学生皆殺しの連打で、山野一の漫画みたいなダーク・ファンタジーに変貌してしまい
ました。モラルの欠如を戯画化した社会批判の映画なんだなあ、などと悠長に構えていたら、
後半ついていけなくなりますよ。三池監督マニア、遠藤憲一マニア、妊婦マニア以外の方は、
近づかないほうが身のためでしょう。
※ビジターQ:http://www.jrss.co.jp/cinerocket/lovecinema
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.4 『日本の黒い夏 冤罪』
 松本サリン事件で犯人扱いされた一市民の生き地獄を再現して、マスコミの偏向報道と警察
の不当な圧力を批判する内容。他人の人生の一つや二つ平気でブッ潰せるテレビの威力を実感
するが、しかし何が怖いって、警察の取調室の不気味さにはちょっと戦慄する。さすがは帝銀
事件、下山事件、じゃぱゆきさん問題など、ややこしそうな昭和暗黒史ばかりを映画にしてき
た熊井監督。反権力、反体制を語りだすともう止まらない。映画の中でも、この場面だけは画
面のドス黒さのレベルが違う。「吐いちまえよ」。ドラマで耳慣れたはずのこのセリフの毒々
しいこと。わけもなく警官に職務質問されてムカついた覚えのある人は、観に行かない方が身
のためです。(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
※日本の黒い夏:http://www.kuroinatsu.com
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Vol.5 セシル・B ザ・シネマ・ウォーズ
●「ハリウッド大作ファック・オフ!」「シネコンなんかブッ潰せ!」を合言葉に、映画のゲ
リラ撮影、つーか、ゲリラ活動のついでに映画を撮ってるような、シネ・カルト集団のテンヤ
ワンヤな物語。目的遂行のための手段、それ自体が目的になってしまったときの馬鹿さ加減を
描いている。(自分でも薄々勘づいているくせに)ありもしない才能に懸けるフリして、まと
もな社会生活から逃避している人には耳の痛い話。近づかない方が身のためでしょう。しかし!
 この映画で最も難儀なのがメラニー・グリフィスだ。セシル・Bの映画にムリヤリ主演する
うちにオルグされる、落ち目のハリウッド女優役なんだが、どうもこの人、自分のキャラを
「あえてセルフパロディに挑戦するユーモアの持主」と勘違いしているようだ。違うぞ。この
映画の目的の残り半分は「メラニー・グリフィスを笑いものにせよ」ってことだぞ。餌食はあ
んただって早く気づけー。ラジー賞候補おめでとな。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
※セシル・B〜公式ホームページ:http://www.cecil-b.com
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Vol.6 『タイタンズを忘れない』
 素晴らしい。私は泣いた。いい話だ。なのにこの映画にはある種のいやらしい妖気が漂って
いる。「ジェリー・ブラッカイマーに見つけられちゃった」という邪悪感がうようよと漂って
いる。イイ話はみんなひっくるめて大金にするシネマ錬金術師・ブラッカイマー。最初写真を
見たとき結構カッコイイと思った。でもよく見るとその尋常じゃなくでっかい鼻の穴が「ハリ
ウッドの大物プロデューサー」のいやらしさを物語っている。さあ泣け! という音楽、さあ
感動しろ! という美しい光景。泣ける場所に付箋が貼ってある『エースをねらえ!』(←漫
画ね)のような映画だ。
 ひっそりとそのへんに漂って長く愛される映画でいてほしかったのは私だけ? 主役(?み
んなが主役、の群像劇なので断定はできないが)のおっさん顔高校生が私はなんとも好ましい。
絵に描いたように、最初ヤな奴→改心→すげえイイ奴→見せ場いろいろ→事件→不幸のどん底、
という転落人生を送るこのおっさん顔を見て、我が心の一本『アメリカン・グラフィティ』を
最初に観たときの衝撃「アメリカの高校生って老けてる!」をまざまざと思い出した。あ〜。
なんでかなあ。ため息ひとつ。いい話なのに。
(斎藤木綿/映画&美容ライター/40ちょい/女性)
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Vol.7 ベティ・サイズモア
●警戒警報発令! おとぼけコメディの皮を被った邪悪な映画が劇場にまぎれ込みました。ポ
ンチなお笑いを装いながら、ヤクザに頭の皮を剥がされる夫の姿を目撃したヒロインが、ショ
ックでテレビドラマの世界と現実の区別がつかなくなったままハリウッドに乱入するという電
波系映画です。コメディなら素直に笑わせときゃいいものを、流血場面の連続と、現実から引
きこもるオタク心理を皮肉った演出で、何となく釈然としない気持ちにさせてくれたりして。
この監督、相当のヒネクレ者です。主演のレニー・ゼルウィガーがまた、一見かわいいい顔し
て、実は心の中にヘビを飼ってるような女なので、映画からにじみ出る邪悪さもひとしおです。
「コーラ飲みながら気軽に笑えればOK」程度の映画ファンは、近づかないほうが身のためでし
ょう。(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.8 ナンナーク
●「永遠の愛」「珠玉」「感動」「涙」「ラブストーリー」。以上、この映画を紹介するとき
に使われるであろうキーワード・トップ5でした。いや、別に間違ってません、そういう映画
です。夫を戦地に送り出した身重の妻が、出産に失敗して死亡。しかし成仏しきれず、帰還し
てきた夫を迎えて一家団欒を演じます。それを知った住職は、幽霊妻から夫を引き離そうとお
祓いを始めるという、タイ版「牡丹灯籠」ですね。問題なのは、なんせバリバリの仏教国なの
で、登場する死体とか死霊の造形が仏教画の地獄絵巻みたいで怖いんですよ。カラカラに干か
らびてアバラが浮いてるくせに、やたら眼力の強い餓鬼のような感じ?(半疑問形) 妻の霊
を封じ込める方法も、ホトケのひたいを叩き割ってパックリ穴開けるという、ちょっとスパイ
シーな一撃。このあたりの“えぐみ”が苦手な人は、近づかない方が身のためかもしれません。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.9 ザ・ダイバー
●米国海軍で始めて黒人ダイバーとなった男が味わってきた、迫害とイジメの半生記。人種差
別の壁に苦労する黒人の物語は、これが初めてではないが、この主人公の運の無さは特筆に値
する。養成所でさんざんイジメ抜かれ、やっとこさ卒業して仕事を始めれば、今度は任務遂行
中の事故で片足切断。死ぬ気でリハビリに励めば、今度は引退を勧告され、軍事法廷で争う羽
目に。本筋と関係のないところでばかり足踏みさせられる人生だ。物語自体は感動作としてま
とまるのだが、感動している場合じゃない。イジメられっ子は、どんなに耐えても頑張っても、
死ぬまでイジメられ続けるしかないのかという、絶望的な真理を突きつけてくる暗黒映画。ク
ラスで嫌な目にあっている人は、観に行かない方が身のためです。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.10 マレーナ
●精通を迎えたばかりの少年が憧れるのは、町中の男どもがヨダレをたらして振り返る、巨乳
の戦争未亡人。ちょいとノスタルジックで純情一筋なセピア色の初恋物語、てな感じのキャッ
チにだまされると、まるで『おもいでの夏』と『個人教授』を足したような映画を想像してし
まいがちですが、観てビックリ。少年のやることといえば、全編これオナニーオナニー徹夜で
オナニー妄想してオナニー覗いてオナニー下着盗んでオナニーって、あんたオナニーばっかり
かい! 「私の人生で彼女ほど愛した女性はいなかった」って、初オカズが最高点の女人生っ
てのも、実り多いんだか何だか。ついでに、ワイドショー的正義感に燃えたオバハンたちによ
る、エディット・ピアフも裸足で逃げ出す未亡人リンチ場面(ボッコボコ蹴り)もあったりし
て、なんかもう濁りっぱなし。ほとんど「イタリア版バラ珍」の世界。甘酢系のオセンチ映画
が好みの女性は用心した方が身のためかも知れませんね。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)

●「トルナトーレ監督がノスタルジックに綴る切ない恋物語」……このキャッチとは裏腹に、
閉鎖的な村の住民の悪意&思春期男子の「やりて〜」願望が渦巻く、かなりダークでえげつな
い内容です。マレーナが街を歩く→オヤジどもが「ええケツしとんなあ」と欲望ギラギラの視
線を投げかける→それを妬むオバサンたちが「下品な女ね」「この淫売が」と囁き合う→主人
公の少年が八の字眉で見送る。基本パターンはこの繰り返しで、だんだんうんざりしてきます。
さらに、半裸の状態で引きずり出されたマレーナが、衆人注視の中、オバサンたちにボコボコ
にされるシーンに至っては、中年女性のねたみ&ひがみパワーの凄さに吐き気すら覚えるでし
ょう。少年時代、友人といちもつのサイズ比べをしたことがある方、父親に「筆おろし」の世
話をしてもらった経験がある方なら、「ノスタルジー」を感じるかもしれません。つまり、若
い女性向けの作品ではないってことです。
(白木真奈美/20代後半/女性)

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