映画がそんなにエライのか

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Vol.11 〜 Vol.20

Vol.11 『恋はハッケヨイ!』
●デブだと言われ続けてきた惨めな人生を打破しようと決心した女たちの選んだ道。それが女
相撲。……ぷっ。 モノの道理として正しいですか。で、考えたんですが、そもそもこれ、誰
のために作られた映画なんでしょう。映画に登場する女相撲のみなさん、当然ですが全員まわ
し姿になります。上半身はサポーターで隠していますが、何故か尻はむき出しのまま。臀部の
荘厳なる球体の合わさった割れ目に深々とまわしを食い込ませています。サウナのシーンがあ
ります。全員バスタオルを使わずに、全裸を披露しています。幾重もの肉の小谷と大波をうね
りだす大海原のような腹。微細な大理石模様のような脂肪の斑紋に艶出しされた乳。美の殿堂
にふさわしく、堂々たる二本の柱にも似た太股。おお、太めの森の美女よ。決まり手はポッチ
ャリ。これこそまさに肉の悦び哉。とかなんとかうっとりする、デブ専のためか? 監督は女
性らしいですが、ちょっと油断なりませんね。「体力測定の記録だから」とか言って、ブルマ
ー姿の女子の腕立て伏せをビデオに撮る体育教師のような邪さを感じるんですがね。ま、誰が
観ようと構いませんが。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)


Vol.12 『ザ・コンテンダー』
●副大統領に任命された女性議員が、大統領に対立する査問委員会とパワーゲームを繰り広げ
る内容。男社会の中で孤軍奮闘する女性のドラマ。なんてな見方が世間一般なんでしょうが、
実はそんなこたぁ二の次で、要は徹底的に共和党を笑いものにするための映画なのです。いく
らハリウッドと共和党が犬猿の仲だと言っても、このキャラ設定はあまりに単細胞に過ぎます。
民主党の大統領は、金髪で長身、ボウリングを楽しむ少年の心とサメ肉を好む冒険心に富み、
いざという時は男の迫力で恫喝するナイスガイ。対して敵役の共和党議員は、くせ毛で猫背、
眼鏡でチビ、ガリ勉で陰険で粘着質のオタクな文科系。この男はかつて現大統領との選挙戦に
負けたらしいのですが、恐らくテレビ写りが悪かったのが敗因でしょう。なにやら、テレビ討
論会でケネディに惨敗したニクソンを連想させるキャラクターであります。まあそれほど日本
にいるとは思えませんが、共和党びいきの人は観ない方が身のためですかね。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.13 『A.I.』
●未来社会における、ペットと産業廃棄物の諸問題に関する映画でした。かねてより、歪んだ
残虐性の露呈が指摘されるスピルバーグ監督ですが、今回も存分にやっています。愛情の履き
違えとか児童遺棄とか細かいエピソードがありますが、やはり白眉はロボット殺しショーの場
面。社会派の衣を着た殺人カタログ映画『シンドラーのリスト』にはかないませんが、いろん
なロボット破壊法を見せてくれています。生物ではない機械に、それが人型で人語を喋るとい
うだけで、なぜ私たちは道義心を感じてしまうのか。人は本質では判断できないということな
のか。オスメント・ロボがやられそうになるのを見て、それまでさんざ歓声を上げていた観衆
が「まだ子供じゃないか!」と、にわかヒューマニストぶりを発揮する場面。言えた義理かよ。
監督のあてこすりが利いています。とうとう底意地の悪さまであらわになってきました。もち
ろん監督自身には、そういう意図はないでしょう。真面目に撮影しているだけのことです。だ
から余計に始末が悪い。「(哀しげに首を振りながら)自分で書いときながらなんだが、むご
い場面だねぇ……あ、そこ、もっと悲惨にね」
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.14 『ロマンスX』
●最近、露骨な性器描写で物議をかもす映画がやたらと多い中、またぞろ強烈なやつが上陸し
てきましたよ。主人公は小学校の女教師。同棲している男がちっともセックスしてくれないの
で(ゲイにあらず)、夜な夜な街に繰り出してはオーラルだのアナルだの緊縛だの、いろんな
男とのプレイに挑みます。そうすることで自分の身体をモノとして肉塊として心から切り離し
ていく過程を描いているわけですが、そのための演出法が局部の撮影というのは少々安易だっ
たかも知れません。「こんなモン、単なる穴だもんネ」というポーズを取りたいがために接写
を繰り返した揚げ句、遂には分娩の特大アップと相成ります。パンパンに張りつめ充血した膣
口をさらにメリメリと押し拡げ張り裂けるようにヒリ出てくる赤ん坊の羊水にまみれた頭。衝
撃を受けるよりも、観ていて下腹が痛い。ああ、あんなになっちゃって……。監督さんの主張
とは全然無関係な印象を与える結果になりました。やり過ぎか? 出産を経験したことのない
女性は、用心した方がいいでしょう。産む気をちょっと失くすかも知れません。奥様が臨月の
男性もね。(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.15 『レクイエム・フォー・ドリーム』
●ドラッグで身を崩していく母と息子、その恋人と友人の顛末記。死体が腐って茶色い腐汁を
滴らせながらとろける姿を超高速撮影したかのようです。この場合「死体が腐っていく」とい
うのがポイント。この連中は登場した瞬間から死んでるも同然なのですね。息子たちはすでに
ジャンキーなので当然ですが、この母親も(冒頭では中毒症ではないが)一日中テレビの前に
座るだけという怠惰な生活を送っていることで充分罪に値するのです。この映画が結果的に告
発するのは、「ラクな人生を選ぶことの罪」ということです。あなたは人生の選択肢にぶつか
るたびに、何度ラクな方を選びましたか? でもよぉ、人生のツケは必ず払ってもらうけんの
ぉ。と恫喝しているのです。ちなみに、先に「結果的に」と書いたのは、監督自身にはドラッ
グの罪を啓蒙する気も、ドラッグ体験を再現する意図も全くないからです。どんなに悲惨なシ
ーンであろうと、画面は常にこぎれいなインテリアと色彩・照明設計とフレーミングに支配さ
れています。そこにあるのはリアルさではなくスタイル。題材は借金でもガンでも株価でも、
奈落の底に落ちるものなら何でもよかったのです。その気もないテーマで観る者をへこませる
この人が、一番あくどいですね。(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.16 『千と千尋の神隠し』
●宮崎映画の主人公は働く人ばかり。監督は、ひたいに汗して地に足の着いた現場の仕事を
する人が大好きです。働かない奴、楽して儲けようとする奴、とにかく適当な奴は大嫌いな
んですね。今までそのテーマを表沙汰にすることはなかったのに、何か業を煮やすことでも
あったのか、堪忍袋の緒が切れたのか。遂に監督はその禁を自ら破って、世間の馬鹿どもを
片っ端から叩きのめし始めました。人の迷惑を顧みず自分のペースで事を運ぶ馬鹿、子供を
甘やかす馬鹿、欲の皮つっぱらかせた馬鹿、思い通りにいかないとすぐ逆上する馬鹿。メッ
タ斬りです。面白いけど、面白がってる場合じゃないですよ。我々全員説教されているわけ
ですからね。そもそもこの内容で「10歳の女の子が楽しめる映画を目指した」というコメン
ト自体がすごい皮肉。10歳までの子供ならまだ、これ観て改心する余地はあるが、それより
成長したバガヤロ様は観ても処置なし。ということでしょう。ところでお年寄りにここまで
イヤミを言われて、若きアニメ作家の卵たちは、自らの作品で何か言い返す言葉を準備して
いるのでしょうか。(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.17 『テルミン』
●アードマンのクレイアニメにでも登場しそうなカワイイ容貌の割にあくどい音を出す、まる
でアダ・マウロの声で喋るミッフィー人形のような、ちょっと油断のならない電子楽器テルミ
ン。その発明者テルミン博士の記録映画です。昔、「たけし・さんまの世界超偉人伝説」でも
取り上げられていましたが、かなり数奇な運命をたどった人です。が。ここで問題にしたいの
は、博士の愛弟子にしてテルミン演奏の第一人者であるクララ・ロックモアなのです。二人は
'20年代後半のNYで出会い、恋に落ちたようです(クララを見つめる当時の博士の目つき!)
。その後、博士は謎の失踪を遂げ、映画のラストは彼女の再会で幕となるわけですが、その時
の彼女の言葉が毒々しい。「私はテルミンを演奏し続け、楽器としての地位向上に身を捧げた。
だけど天才の名声はいつも彼のもの」。漏れとんなあ漏れとんなあ。もちろん冗談口調ですが、
その言葉が本心でなければ口から出なかったのも事実。と考えた途端に、それまで映画で語ら
れてきた二人の軌跡が何やら不穏なものに変質していくのです。博士は結局クララではなく、
別の黒人ダンサーに熱を上げて結婚しているのです。その時のクララの心中は……。その後の
クララの妄念は……。ああ、今にもテルミンサウンドが大音響で流れてきそうな……。ヒャラ
ラア〜ヒャララア〜(F.O.)(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
公式ホームページ:http://theremin.asmik-ace.co.jp/
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Vol.18 『PLANET OF THE APES 猿の惑星』
●すでに解明されているように、バートン映画には幾つかのルールが存在しますが、その一
つに「共同体の中で浮きまくりながら、事態を自覚していない変わり者が主人公」というの
があります。つまり、この映画の主人公はメス猿のアリなのです。アリは猿でありながら猿
よりも人間が好きな一種の変人。親の頭痛の種。夢見がちで反社会的な性格です。まさに
『ビートル・ジュース』のウィノナ・ライダー(黒髪にGOTHなアイラインもそっくり)、
『マーズ・アタック』のナタリー・ポートマン(ともに有力政治家のお嬢様)。そんな彼女
が心を開くのは、伝説どおりにやって来た宇宙人(ウォールバーグ)のみ。まんまバートン
映画ですね。で、問題のラストシーン。誰にも相手にされないアリがようやく巡り会えた理
想の相手は、こともあろうに彼女を捨てて去ってしまいました。そのために彼は取り返しの
つかない生き地獄に堕ちるわけですが、これはつまり、「オタク」の一言で無神経に括られ、
「キショい」とか「キモチ悪い」とか言われ続けてきた者からの呪いなんですね。友達だと
(勝手に)信じていたのによくも裏切ッタナ。ボクラニツメタクスルトドウイウコトニナル
カオモイシラセテヤルカラナ……。(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.19 『ジュラシック・パーク III』
●ある境遇に身を置いている人にとって最もショッキングな場面は、サム・ニールとローラ・
ダーンが結婚できなかった事実が判明する瞬間でしょう。サム・ニールの博士は恐竜オタクで
あります。1作目のラストは、大冒険の末に苦手だった子供も受け付けられるようになった博
士が、唯一の理解者であるローラ・ダーンのガールフレンドに見守られながら眠る場面で終わ
りました。ところが、二人の複雑な表情でそれなりの葛藤やドラマがあったことは推測できま
すが、結局彼は結婚できなかった。ばかりか、どこの馬の骨とも知れない馬鹿一家が再生する
手助けをさせられてしまいます。抱き合う親子三人をニコニコと見やる博士の笑顔。笑ってて
いいんですか、博士! しかも、襲いかかる恐竜までもが巣だの卵だの雛だのツガイだのと、
やたら家族構成を強調して登場します。独身の博士だけが、徹底して家族連れに振り回されて
いる。そう、つまりこの映画は、オタクでもマニアでも研究でも修業でも、すべてを賭けて一
つのことを希求する人生を選んだ者に対して、家族を持てないまま生涯を終えるだけの覚悟は
できているのかよ! と問い質しているのです。そういう意味では、発掘現場でチャラチャラ
作業していた学生が半死半生の目に遭ったのも当然の報いと言えるでしょう。仕事ナメてんじ
ゃねえぞ、てめえ。(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.20 『ゴースト・ワールド』
●世の中から浮いたちょっとGOTHな少女が、マスや多数決や付和雷同に唾を吐きかける痛快あ
てこすり映画! と思っていたら、逆に敗残して逃亡するはめになる悪夢のような物語でした。
自分の不幸は自分に責任がある、という内容です。この少女が大失敗した理由は、自分では独
自の価値観で個を確立させている気でいたが、実は単に他者に反撥することで相対的に空域が
発生していただけにすぎなかったから。あくまでも自分に向かってくる存在があって初めて成
立するシステムなので、高校を卒業して世間の無関心の中に放り出された瞬間からいきなり世
界が崩壊してしまったのです。渡る世間はクソばかりなどと勝手にホザいてる割には、いい歳
こいておのれの筋書きすら満足に書けていないボンクラ君やカラバカちゃんは、まあ一度目に
してみてください。世の中はアンタなんかに構ってる暇はないんだってことが、よっく判りま
すから。(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
●公式サイト:http://gw.asmik-ace.co.jp
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