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Vol.21 〜 Vol.30
Vol.21 『シャドウ・オブ・バンパイア』
●戦前のドイツ映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』でバンパイアを演じていたのは本物だった。と
いうオフ・ビート調のコミカルなドラマ。を作るつもりだったようです。実際には、クシャミ
がスッキリ出なかった時のようなもどかしさを感じてしまう結果となっていました。ですがこ
れ、視点をズラすと、老醜のバンパイアをイチビリ倒す映画だということが判ります。ウィレ
ム・デフォー演じる老吸血鬼(オスカー候補も納得の名演)は、羽振りが良かったのも昔の話。
今じゃ頭はツルっ禿げ、鼻水は垂らしまくり、まともなメシにもありつけず、映画監督に怒鳴
られながらカメラの前で慣れない芝居に四苦八苦する毎日。プロデューサーや脚本家と一緒に
焚火を囲んでコウモリの血をすすりながら、「オレだって昔はよォ、召使いズラーッと並べて
ブイブイいわしてたんだよバーロー!」とグチったりします。会社を倒産させた元社長が、ド
ヤ街でワンカップなめながら銀行の悪口言ってるのと同じ図ですね。落ちぶれ者には、ちょっ
とつらいかも知れません。人生負け組の人は近づかない方が身のためでしょう。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
Vol.22 『ドリヴン』
●スタローンはシナリオライターです。ソ連のボクサーを血まみれにして米ソ和平を訴え、M1
24ハインド武装攻撃ヘリとT55戦車を正面対決させ、標高4000mの冬のロッキーを裸で登るなど、
数々の名場面を脳内ホルモン全開で書き散らしてきました。そして今、彼の物語世界は、人知
の及ばないレベルに達しつつあるようです。スタローンの心の中では、男と男が深く理解し合
うためには、時速300キロで公道を爆走したあと路上で怒鳴り合い、ライセンス剥奪はおろか
免停の処分すら受けないままハリケーンのような豪雨の中でレースを続行し、クラッシュして
森のはるか彼方まで吹っ飛んだ車からドライバーを助けるためレースを中断してそのまま車で
外へ走りだし、間一髪救出した瞬間に高さ20mもの火柱をあげて爆発炎上しなければならない
のです。バカ話と言ってのけるのは簡単ですが、これを中学生ならともかく50 もとうに過ぎ
た男が真剣に書き、金を集め人を集め、おまけに自分でセリフまで喋っているのかと考えると、
なにやら薄ら寒いものを感じずにはいられません。50過ぎですよ50。もはや少年の心とか言っ
てる場合じゃ、ないですよ。(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.23 『蝶の舌』
●内戦前夜のスペインを舞台に、8歳の少年の目を通して、村の大人たちの行状を描いた作品
です。大人たちの諍いや愛情の風景、淡い恋やセックスへの好奇心、死の影と人生の讃歌など
が映し出されていきます。森の描写が美しいなあ。こんなところで夏休みを過ごしたいなあ。
などと呑気に構えていたら、ラスト5分でいきなり地獄の釜の蓋が開きました。右派勢力が台
頭してコミュニストを弾圧、少年の恩師が強制連行されていきます。その途端、長いものには
巻かれろとばかりに「このアカ野郎!」と群衆の中で叫ぶ少年の両親。母親が「お前も叫べ」
と命令し、少年は歯をむいて石を投げるのです。……母よ、あなたの息子は呪われてしまいま
した。それが家族への愛情だと錯覚した、頭の悪いアナタの手によって。彼は二度と自分の心
を信頼することができないでしょう。死ぬまで自分を責め続ける生き地獄に堕ちたのです。
「アンタのためを思って言ってるんだよ」。皆さんの母親も同じ言葉を? 私たちは誰もが、
親から何かの呪いをかけられているのかもしれませんね。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.24 『ブリジット・ジョーンズの日記』
●「等身大女性像」てな宣伝文句で飾られているんで、独身女性のちょっと辛い胸の内を暴く
映画かと思いましたが、結局は「幸せの青い鳥」パターンのラブコメでした。デブでだらしな
い30過ぎの独身女性、ブリジット。失礼しちゃうなあ。こんな女がみなさんと等身大なわけは
ないですよね。だってブリジットは 1.一流出版社のプレイボーイ編集長に言い寄られる 2.
オックスフォード出身の一流弁護士に求愛される 3.レポーターに転向して成功する 4.本当
はレニー・ゼルウィガーで凄い年収を稼いでいる 5.役作りで6キロ太ったが撮影が終わると
スリムに戻っている。 ほうら、どこが等身大なんでしょうかね。恋人も家庭も子供も仕事も
明るい未来もなんにもない独身女性の足下を見るのもいい加減にして欲しいもんです。くれぐ
れも気をしっかり持って、普通の映画として観ましょうね。自分のことを本当に判ってくれる
他人なんか、この世には1人として存在しないんですからね。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.25 『忘れられぬ人々』
●太平洋戦争を生き延びた三人の老人が主人公の物語です。このテの話にありがちな「俺たち
が命を賭けた日本は馬鹿者どもの国に成り下がった……」というお年寄の嘆息がダラダラと流
れるだけの前半を、なんとか乗りきってください。中盤からドエライ方向にねじれていきます
から。直接的間接的に三人の生活を脅かす存在として、カルトめいた霊感商法企業が登場しま
す。若者を洗脳して老人どもの家に監視装置を密かに設置させ、そこから得た個人情報をもと
に次々と壺や多宝塔や仏像を売りつけていくというハイテク集団です。人間80年も生きていれ
ば、誰でも弱みの一つや二つはあるもの。ましてや供養とか極楽とかの言葉に敏感な年頃なの
で、イチコロです。ジイチャンたちは若者を「礼儀知らずの青二才」と思ってるかもしれませ
んが、何をのん気なことを。あっちはアンタらの人格なんか端から認めてないぞ。「所持金以
外に価値のない、人生のしぼりカス」ぐらいにしか思ってないんだかんね。人間を一番よく知
っているはずの老人が、実は一番の世間知らずだという暗たんたる現実を教えてくれる映画な
のでした。ああ東京砂漠。(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.26 『リリイ・シュシュのすべて』
●頭の中がおかしくなってしまった中坊どもがゾロゾロ出てくる暗黒映画です。イジメ・万
引き・売春・暴行・殺人といろいろやっています。14歳の凶悪な一面を強調したいのでしょ
うが、しかし、現実はもはや首狩りまでいっちゃってるわけですから、この程度の内容では
リアルとは言えない。そもそも、荒廃した子供の精神を描写するのに、田園に立ちすくむ姿
を撮影するという叙情的な演出プランからして、社会問題に対して責任ある態度を取るつも
りはなさそうです。結局、14歳の闇ではなくて、(14歳から持ち続けているのかもしれない)
監督個人の凶悪な素質が露呈しているだけなんですね。ひょっとして自身のドス黒い部分に、
ある種のロマンすら感じているんじゃないかな。狂える青春は美しい、みたいな。極度に個
人的な波長を発信している映画ですから、全く受け入れられないか過度にのめり込んでしま
うか、観客の反応も極端なものになるでしょう。ちょっと前に似たような映画がありました。
『エヴァンゲリオン』。映画終盤の雰囲気も妙に似ていますし、『式日』に監督が出演した
のも何かの符号かも。両監督ともに40前で14歳の物語をモノにしたあたり、何の因果なので
しょうか。コアなファン同士で論じ合ってみて下さい。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.27 『グリッター きらめきの向こうに』
●要は『スター誕生』です。ダイヤの原石を業界の先輩が磨いて売れる。売れすぎて立場が逆
転する。勝ち組と負け組。と、ここまではありきたりな話なんですが、終盤にかけて掟破りの
展開となります。マライヤを発掘したかつての恋人は、一念発起して彼女に捧げるバラードを
書き上げましたが、昔のイザコザが原因で殺されてしまいます。それを知ったマライヤは、悲
しみをこらえてコンサートに出演。これ普通ならですよ、彼の書いたその曲を歌って盛り上げ
るモンでしょうに、全然違うてめえの新曲を歌い上げるマライヤ。せめて恋人の名前を一言呼
ぶくらいしたって良さそうなもんだが、そうは問屋がマライヤ。死に顔一つ見ないで、コンサ
ートがハネたらリムジンに飛び乗り、昔生き別れた母親の家に直行。抱き合って終わりって、
おい、ほったらかしかいっ。まさにマライヤ一人勝ち。これも一種のマキャベリズムなのかも
知れませんね。(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.28 『特攻!BAD BOYS』
●女優嬲り、としか言いようのない映画ってありますよね。制作側が意図しているのかいない
のか、結果的に「何やらされてんだ、この女(優)」と苦笑してしまう作品。今思い浮かんだ
のが、あまりにマイナーですみませんが、ケン・ラッセルの『白蛇伝説』とかね。正体が蛇神
の化身だった女が、なんかテキトーな蛇頭メイク&パンツ一丁姿のまま、真顔でクネクネとヘ
ビダンス踊りながらカゴから出てくるんだよ。わはは。仕事とは言え、俺だったら三日はヘコ
むね。でもって、スー・チーです。クローン人間って設定なんですが、実は培養に失敗したプ
ロトタイプがゴッソリいて、つまるところ『エイリアン4』ってわけなんですが、なんせ特殊
メイクにかける予算がないので、尼ズラかぶっただけで顔をひん曲げて「アウーアウー」って
やってんですよ。ンなことしてんじゃねえよ、スー・チー……。頼めば何でもやってくれると
思って、完全にナメられてますね。今回は邪悪というか邪笑な感じの話でした。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.29 『ソードフィッシュ』
●「最近の映画は爆発だけの馬鹿映画ばかり」という、リスキー極まるセリフで映画はスター
ト。よほど自信があるのか、と観てるこちらも褌を締め直そうと思った矢先、発言の主が『バ
トルフィールド・アース』のトラボルタと判明し、精神的に3歩ズッコケてしまいます。ド厚
かましいにもほどがありますね。冒頭の爆発シーンは、なるほど刺激的でしたが、ジャックマ
ンがフェラチオされながらハッキングのテストを受ける場面(しかも口内発射あり)で、「あ。
こりゃ馬鹿映画だ」と確信しましたよ。でも思うんですが、作っている側もまともな神経を持
った大人なら、自分らがどれだけ阿呆なモンこさえてるかぐらい判るハズですよね。と考える
とオープニングのセリフも、なにやら自嘲気味な言葉に聞こえてきます。よくあるハリウッド
映画を否定するポーズを取りながら、確信犯的に典型的なハリウッド映画に終始する姿勢に、
客に対するアッカンベーを感じますね。あ、観客に仕掛けられた罠って、そのことなのか?
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.30 『ロード・キラー』
●ロンブーのTHE BL@CK MAILみたいなイタズラをトラック野郎相手に仕掛けたばかりに、命を
狙われてしまう兄弟の物語です。しかし観ていて殴りたくなりますね、この弟。確かに全ての
元凶は弟をそそのかした兄貴にあるんですが、話をややこしくしているのは全部弟の責任です
からね。逆ギレしたトラック野郎が無関係の市民を惨殺したと知るや、黙っときゃいいのに警
官にゲロ。結果、州から追放。シカトこいときゃいいのに、わざわざトラック野郎に自分から
謝ったせいで、正体と居所を確認されちまいます。何でも正直に謝れば、必ず許してもらえる
と思っているんでしょう。それは正しい考え方ではあるが、世の中には道理の通らぬイカレポ
ンチも存在するんだってことなど、夢にも想像しないんですな、この手合は。ハッキリ迷惑だ
よお前。突っ張りきれないんなら、最初からすんなよ。大体、自分の正論通りに人が反応する
と信じること自体が傲慢だろうに。「馬鹿正直」とは「馬鹿」がつくほどの「正直者」のこと
ではなく、「正直者」を気取ってイイ気になってる「馬鹿」のことなんですね。勉強になるな
あ。(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)