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Vol.41 〜 Vol.50
Vol.41 『愛しのローズマリー』
●「美人は心が醜く、不細工な女は心が美しい」という、ひどくいびつな人間観が不愉快極ま
りない映画です。「人を見かけで判断しない」という正論から、どうしてこんな結論が導き出
されるのかが私には理解できない。ここでは、「外見が美しく心も美しい」「外見が醜く心も
醜い」という2つの事象が意図的に無視されています。無視しないと都合の悪い人が、こうい
うモノの考え方をするわけですね。さあ、どっちだ? 心の美しい人が「美人に限って、どう
せ心が醜いんだよ」などという荒んだ考え方をするのは、論理的に正しくなさそう。というこ
とは……。この映画に妙に共感している人がいたら、その人はつまり。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
Vol.42 『突入せよ!「あさま山荘」事件』
●男の言う「プライド」なるものが、実際のところはチャチなメンツに過ぎないという事実を、
わかりやすく解説してくれる傑作コメディです。しかし、これではあまりにも長野県警役立た
ず。当時の関係者とかその家族は、一体どんな気持ちで劇場を出るのでしょうか。この作品に
限らず、こういうケツの穴の小さいオヤジどものチンケなつば迫り合いを観るにつけ私は考え
るのです。こんな無能な男たちも、家に帰れば誰かの父親なんですよね。あなたは、自分の父
親が会社や組織内で使えない人間であるという事実を、想像したことがありますか。出来ます
か。あなたが家で小馬鹿にしているように、父親が社内でOLや同期や上司に小馬鹿にされてい
る場面に遭遇したら、動転しないでいられますか。普段あなたと一緒になって中年男にムカつ
いている友達が、それと知らずにあなたの父親にムカついても同調できますか。自分の父親が
正真正銘、頭が悪くて小心で口先だけの無責任男だとしたら……。この映画を観てからちょっ
と想像してみて下さい。嫌な気分になりますよ。そしてその想像は、多分当たっているのです。
だって、私たち程度の人間の親なんですから。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
Vol.43 『暗い日曜日』
●聞いた人間が次々自殺を遂げたという、まるでモンティ・パイソン「恐怖のギャグ爆弾」み
たいなシャンソンの誕生秘話。ということはですね、誕生してから以降はあまり語るべきこと
は残されていないわけですよ。しかし「知ってるつもり」の再現ドラマならともかく、映画の
場合はストーリーの締めくくりを提示する必要があります。そこで考え出されたのがナチス台
頭+ブダペスト。物語は中盤からホロコーストものにシフトします。恋人2人をナチス将校に間
接的に殺されたヒロインが、現代が舞台のラストで復讐の仕置人と化してエンドマーク。筋は
通っていますが、別に「暗い日曜日」の話でなくても成立するわけで、なんじゃこりゃってな
もんです。面白いのが、その悪役の将校が現在においては、ナチスにも関わらずユダヤ人を大
量に逃亡させた偉人、との評価を受けている点。実は、弱みにつけ込んで各人から財産を巻き
上げており、結果的には善行だが動機自体は悪行三昧だったというのが真実なんです。何がシ
ンドラーのリストだ。人が金目当て以外に、人助けに命懸けるかバガヤロ。という、ますます
シャンソンなんかどうでもいいような、ハードコアな皮肉が込められてました。全ての美談は、
まず疑ってかかるべきなんですね。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
Vol.44 『I am Sam アイ・アム・サム』
●映画を観る前に抱いていた最大の疑問は、知的障害者のサムの娘を産むのはどんな女なんだ
ろう、どういう経緯なんだろう、ということでした。直接それを物語る場面はありませんが、
どうやら、アウトローなホームレス女が上手いこと言いくるめて彼のアパートに泊まり込み、
宿賃代わりのつもりかセックスに耽った揚げ句、計算違いで妊娠してしまった、という事情の
ようです。なんちゅうことを夢想するのか、この監督(兼脚本)は。サムにはエロティックの
概念もセックスの知識もありません(それを示すエピソードは存在する)。だから彼の方から
女にのしかかったとは考えにくい。とすれば恐らく、女がベッドの中でキスしたり身体をまさ
ぐるうちに(肉体は健全なので)勃起の反応が起き、それを強チン。そんなところでしょう。
自分の陰茎に起きた只ならぬ変化に動揺するサム。ぐへへとばかりにそれを股間に収め、腰を
振り倒す、頭のイタイ女。どんなドス黒い光景が、シナリオ執筆中の監督の脳裏をよぎったの
でしょうか。 考えると、ちょっと暗鬱とした気分になりますね。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.45 『セッション9』
●いわく付きの廃虚に踏み込んだ現代人が、魔の封印をうっかり解いてしまって悪霊復活。内
容はゴシックホラーの王道でした。ただ取り憑かれるのではなく、すでに全員がなにがしかの
ストレスを抱えており、それを触発するのだというところが妙味でしょうか。で、ハッキリ書
いちゃいますが、リーダー格の男が殺人犯です。実はこの男、経営する会社が傾きかけている
うえに、最近子供が生れたばかりのため首が回らなくなり、妻子を絞め殺していたんですよ。
へい、そこや! 邪悪の瘴気が立ちこめとるでぇ。自分一人なら、金回りが悪くなってもパン
の耳喰って何とかしのげるが、家族はそうはいかない。食い物をねだる子供、ブーたれる妻、
舞い込む請求書、呼び鈴を押す大家。テメエで作った家族が、テメエの人生の重荷足かせに裏
目ってしまう地獄絵図。「コイツラサエ、イナケレバ……」世のお父さんたちのドス黒い苦悩
がスパークしています。家族を持つ男性はちょっと考えてみて下さい。アナタの人生のバラン
スシートは、良好ですか?
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
Vol.46 『スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃』
●昔、ビートたけしの与太話で「ダッチ自分」というネタがありました。自分の姿形に似せた
ダッチワイフを抱いて寝ることで(本来ダッチワイフとは、オランダ人考案による、簀の子を
巻いた形状の抱き枕であるとか)、より深い自我への埋没を導き、安眠を誘うのだという自説
です。今回、ジャンゴ・フェットとボバの関係を知るにあたり、最初に連想したのがこの「ダ
ッチ自分」でした。パートナーは不要だが子供は欲しい、という願望を究極まで推し進めたら
こうなりますか。それとも極端な自己愛の顕れか。しかも、記憶を共有した完全なる複製では
ないので、自分の欠点を排除し長所を助長させることで、理想的な自分を作り上げていく愉し
みがある。つまり人生のやり直しを託すことが出来るわけです。あるいは不測の事態に備えて
の、自分の移植用生体パーツの確保にもなりますしね。この映画を見たチビッコの何人が、商
売気のあるマッドサイエンティストとして目覚めてくれるのか。その時、守銭奴ルーカスとの
パテント争いはどこまで激化するのか。夢は拡がる一方です。あと、ライトセーバーとモビル
スーツも誰か頼む。生きてるうちに、実物を見てえんだよ。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
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Vol.47 『es〈エス〉』
●大学の心理実験に被験者として潜入した、馬鹿フリーライターのはた迷惑を描いた内容です。
こいつホント、馬鹿。潜入ルポだっつうのに、一番に目立ちまくったおかげで、被験者全員に
疎んじられてインタビューを全く取れない状態に陥ってます。何しに行ってンだ、お前。それ
でもプロか。そもそも騒ぎの原因は、状況悪化を狙ったこの馬鹿が、体臭を気に病んでいた看
守役被験者を「臭い」と煽ったことにあります。他人から「臭い」と言われることが、どれほ
どの屈辱と破壊力をもたらすのかを、この馬鹿は完全に読み違えていたようです。ために、半
死半生の目に遭わされるんですが、まあ、それだけのことを言っちゃったんだからねえ。同情
の余地なし。みなさんもこの映画に学んで、人に「臭い」と宣言するときには、それ相応の覚
悟を決めてからにしましょうね。負けるな山本圭壱。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
Vol.48 『パワーパフ ガールズ・ムービー』
●男が子供を欲しがるとき、脳裏を過るのはどのようなビジョンであるのか。その一端を知ら
しめてくれる映画です。独身中年のユートニウム博士が、生れたばかりのガールズを前にして
はしゃぐセリフに、ちょっと考えるべき点がありましょう。「夢がかなった。子供に善悪の区
別を教える喜び。良い父親になるぞ!」。育てること抱きしめることよりも、導くこと従わせ
ることへの強い欲求。子育ての極意とは死なさないことですが、しかし男の場合は、そういう
面倒臭い手間は全て女に押し付けて、可愛いとこだけ摘み食いする魂胆があるようです。欲し
いのは、適度に自立して、しかし庇護を求め、全幅の信頼と敬意と甘えを自分に寄せてくれる
都合の良い存在。そうして見ると、ガールズが何故いきなり幼児として発生したのかも読めて
きますね。物心以上自我未満という精神の発育状態は、ペットとしてまさにうってつけだから
でしょう。現実の妻や恋人だととてもこうはいかない。隙あらば、男を見下そうとしますから
ねえ。(このテーマ、『SWEP2』へと続く)
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
Vol.49 『イン・ザ・ベッドルーム』
●一人息子の恋人は、暴力亭主と別居中の子持ち女。愛があればどんな障害も乗り越えられる、
などとガキの世迷い事をほざいていますが、要は子供を産んで脂ののった女体に中毒気味なだ
けの話。そんなこととっくに察している母親は、当然のように息子を諌めますが、問題なのが
父親。「まあいいじゃないか」と、一見リベラルな態度を示しはするが、実は問題解決を面倒
臭がり、そのうち誰かが何とかしてくれるだろうと逃げを打っているに過ぎません。問題の暴
力亭主が自宅に乱入したときの、傍観者を装ったあの腰抜けぶりはどうだ。案の定、息子が男
に殺されるや、今度は女房に責められて逆ギレ。揚げ句に、理性的解決を信条にしていたくせ
に、女房にせっつかれて必殺仕置人と化す始末。事態は悪化の一途を辿り、心の闇は尚一層重
くのしかかり、血脈は絶え未来もなく全てを失ってしまったのも、ひとえにこの父親の決断力
・統率力のなさが原因なのです。父親業の難儀さを説いた、身にしみる訓話なのですね。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)
Vol.50 『アバウト・ア・ボーイ』
●親の遺産でとりあえず喰うに困らないのをいいコトに、40近くまでブラブラと無責任に生き
てきた男が、ちょっとした生き地獄に堕ちる話です。主役のヒュー・グラントの、なんかもう
切実な表情(それにしてもシワだらけ)が抜群に良くて、これは彼のベストバウトのひとつに
挙げられるでしょう。「そうさボクはペラペラの空虚な男だから」とヘラヘラうそぶいていた
彼は、言葉通り本当に自分がペラペラの男であるという事実に直面して初めて苦悩します。38
歳無職みたいな境遇の人にとっては正視するにしのびない内容でしょうから、近づかない方が
身のためです。映画自体は建設的な方向へ、健全な雰囲気で終わるのですが、これがまた罠な
んですな。グラントは、なんだかんだ言っても金持ちで、だから心を入れ替えさえすれば人生
も好転するのでしょうが、現実の38歳無職には親の遺産も新しい就職口も世間に認められる才
能も恋人も友人も、何にもない! 何にもないのだあああああ! 結局、独り置いてきぼりで
すわ。人生のツケは必ず払わなければならない、ということが身にしみてわかる映画ですね。
(上田貴士/編集/もうすぐ四十郎/男性)